2017年6月5日月曜日

iFi Audio Pro iCAN ヘッドホンアンプの試聴レビュー

今回はiFi Audio Pro iCANについての感想です。

DACは搭載していない純粋なアナログヘッドホンアンプで、価格は25万円と非常に高価なので、自宅でのヘッドホンオーディオ環境を極限まで追求したい人のみが手を出すような高級モデルです。

iFi Audio Pro iCAN

2016年6月発売からもう1年も経っていて今更なのですが、ここ2ヶ月ほど友人のよしみで毎週末2~3時間程度じっくり聴く機会があり、印象とかを適当にダラダラとメモしておこうと思いました。


Pro iCAN

ヘッドホンファンにとってiFi Audioについての前置きは不要だと思いますが、個人的にかなり贔屓にしているブランドです。良い意味で「真面目さ」と「ノリの良さ」を両立しており、つねに趣味としてのオーディオを盛り上げようという前向きな姿勢が感じられます。

私自身はUSB DACの「micro iDAC2」、フォノアンプの「micro iPhono」そしてポータブルDAC/アンプの「micro iDSD BL」の三種類と、USBケーブル「Gemini」を購入しており、日々の音楽鑑賞に使っています。

高価なだけあって存在感はすごいです

今回のPro iCANも、デビュー当時からとても気になる存在だったのですが、据え置き型ヘッドホンアンプで25万円となると、気軽に手を出せるようなものでもありませんし、最近まで身の回りの友人で持っている人もいなかったので、じっくりと腰を据えた試聴の機会に恵まれませんでした。

据え置き型ヘッドホンアンプというのは自宅の冷蔵庫みたいなもので、そうそう新製品が出るたびに買い換え・買い足しするようなものでもないです。私自身も一年ほど前にViolectric V281というアンプを新調して以来、未だにそれに満足して愛用しており、他の据え置きヘッドホンアンプ新作はあまり眼中に入りませんでした。

ところが最近になって、定期的にPro iCANを長時間使う機会に恵まれたわけですが、そうやって聴いているうちに、だんだんと自宅のV281や他のヘッドホンアンプとは一味違う特別な魅力のあるアンプだという風に思えてきました。

真空管アンプの窓と放熱穴がカッコいいです

micro iCAN SEよりも濃い銀色です

実際Pro iCANを目の前にしてみると、これまでのiFi Audio製品よりも大人びた上質な仕上がりに驚きます。特に今回は真空管をフィーチャーしているので、トップパネルの放熱穴も凝ったデザインになっており、「上に物を乗せちゃダメだよ」と暗に示しているようです。

これまでの小型モデルのギラギラした荒い銀色と比べると、もっと落ち着いたチタングレーのような色合いです。ただしボリュームノブやセレクタースイッチなどはあいかわらず軽量でチープな感じはします。

トップパネルが波打っているのがわかります

こんな感じに表面がデコボコしています

シャーシパネルはいわゆるアルミ押出材なのですが、直線ではなく、わざとデコボコに波打った質感にしているのがユニークです。これのおかげで「ただの箱」というイメージを回避できて、退屈なプロ用機器などと差別化できます。陰影が生まれるので写真写りも良いですね。

Hugo TTと並べてみた

様々な出入力端子で埋め尽くされているため、一見巨大に見えますが、写真で想像していたよりも本体はコンパクトです。重量は2kg、幅は200mm程度なので、いわゆるBenchmark DAC3とかMytek Brooklynみたいなプロ用ハーフラックサイズ機器よりも若干小さいくらいのサイズです。

ただし、高さは1U(44.4mm)よりも厚い63.3mmで、放熱も考えると、ラックに入れるというよりはあくまで卓上でスペースに余裕を持たせて使うことを想定しているようです。実際一時間くらい通電していると、触るとじんわり熱くなるくらいです。

底面には大きなゴム板が

底面を見ると、一般的な四隅のアルミ足などではなく、四角いゴムの板が貼ってあります。

説明書によると、このゴム板はそれなりに理由があるらしく、実はゴムと金属の4層構造で振動対策と電磁シールドのためにベストな組み合わせだそうです。たとえばDACとかと重ねた場合にはノイズ耐性のメリットがあるのかもしれません。なにはともあれ、完全に平らなテーブルでないとグラグラします。

様々なヘッドホン端子に対応しています

ヘッドホン出力端子の種類が豊富ですが、iFi Audioとしては初のバランス駆動対応アンプでもあります。バランス駆動のメリット・デメリットについては各メーカーごとに見解があると思いますが、せっかくの据え置き型フラッグシップアンプということで、ユーザーが求めているものを全部詰め込もうという意欲が感じられます。

6.35mmヘッドホン端子は、3ピンXLRと兼用のコンボジャックです。XLRの方はバランス接続用に左右で信号を分けており、一方6.35mmはTRSアンバランス用なので、左側は「L- R- GND」右側は「L+ R+ GND」と配線されています。つまり、6.35mmヘッドホンを接続する際は、右側を使えば非反転になります。

3.5mm 4極バランスケーブル対応は嬉しいです

中心には、近頃の大型ヘッドホンアンプで主流の4ピンXLRバランス端子がありますが、それ以外にも、あると便利な3.5mmTRSアンバランスと、さらに見落としがちですが、3.5mm 4極バランス端子もあるのが珍しいです。

この3.5mm 4極というのは私の使っているCowon Plenue Sのタイプなので、手持ちのバランスイヤホンケーブルをそのまま直挿しで使えるのが嬉しかったです。

AK 2.5mmは変換アダプタが必要です(写真はCowonのやつ)

ここまでいろいろ豊富にあると、AK2.5mmタイプのバランス端子が無いのが残念ですね。もちろんアダプターなどでどうにでもなります。あと、最近話題のソニー4.4mmは発売時期的に搭載されていません。

XBassノブと、モード切り替えスイッチ

フロントパネルのノブ類は、あくまでアナログアンプなので、「入力ソース切り替え」と「ボリュームノブ」があれば済むのですが、それ以外にもいくつかの特殊機能があります。

3D Holographicとゲイン切り替えスイッチ

二つの小さなノブは、低音ブーストの「XBass」(OFF・10・20・40Hz)と、3Dクロスフィードっぽい「3D Holographic」(OFF・30・60・90°)です。どちらも通常はOFFで、必要な時だけカチカチとノブを回してちょうど良い具合に調整するような感じです。つまり試聴時にはひとまずこれらがOFFになっているか確認すべきです。

ちなみに「3D Holographic」はラベルで見られるように、ヘッドホン用と、リアパネルのライン出力(スピーカー用)では効果が若干異なるようになっています。

ノブの下には小さなマイクロスイッチがあり、左側はアンプ回路「Solid State・Tube・Tube+」モード選択で、右側はヘッドホンアンプの「0・+9・+18dB」ゲイン切り替えです。

あと、据え置き型アンプなだけあって、ボリュームノブはモーター連動式でリモコン操作できるのも便利です。

電源ランプは綺麗ですが、左下の電源スイッチはわかりづらいです

細かい点ですが、実用上ちょっと不満だったのは、電源スイッチを入れると左上のiFiロゴがうっすら点灯する小洒落た演出なのですが、周囲が明るいと判別しにくい、ということと、マイクロスイッチが小さくて操作しづらい、というくらいです。全体的に上手にコンパクトにまとめた、という印象です。

アナログアンプなので、アナログ入出力のみです

リアパネルもシンプルでわかりやすい配置で、入力はRCA×3とXLR×1があります。さらにライン出力用にRCAとXLRが一つづつあるので、ラインプリとしてパワーアンプやアクティブスピーカーに接続する用途でも需要がありそうです。その場合リモコンボリュームは特に便利ですね。

ESL-Linkコネクタが気になります

さらに、HDMIみたいな形状の「ESL LINK」というコネクタがあるのですが、これは別売のESLモジュール専用端子で、いわゆるSTAXタイプの静電ヘッドホンのためです。

公式サイトから、発売予定のPro iDSDとESLユニット

このESLユニットは、単独で使えるSTAX用ヘッドホンアンプだと思っていたのですが、実際はPro iCANとセットで使うドッキングモジュールだったようです。

ちなみに、公式サイトによると、さらにPro iCANと同じサイズのDAC「Pro iDSD」も発売予定だそうです。全部合わせると上記写真のように三段重ねになります。

STAXといえば、本家本元からも2017年5月に待望のフラッグシップアンプSRM-T8000(65万円くらい)がデビューしたので、STAXファンは駆動アンプの選択肢が増えて楽しい時代になりましたね。

ACアダプターがコンセント直挿し形状じゃなくて嬉しいです

あとPro iCANで特筆すべきポイントは、電源がACアダプター式だということです。今回私が使ったのは欧州向けモデルで、iPower ProというACアダプターが付属していましたが、各国の事情によってアダプターの外見や仕様は変わるかもしれません。

付属品は15VDCですが、説明書には9~18Vまで(60VA)対応と書いてありますので、自作でDC安定化電源とかを組み合わせてみるマニアもいるかもしれません。

ACアダプターというのは賛否両論あると思いますが、オーディオ機器の電源というのは永遠の悩みのタネなので、なんであれメリット・デメリットがあると思います。

たとえばPro iCANと同サイズのMytek BrooklynやBenchmark DAC3などは、ACアダプターと同等のスイッチング電源を本体に詰め込んでいるので、隣接回路への高周波ノイズの飛び移り対策に力を入れています。

一方ラックスマンやソニーなど日本のメーカーは昔からトロイダルやRコアトランスを好んでおり、その方がベテランマニアに喜ばれますが、大出力になるほど50・60Hz電磁ノイズが心配です。

結局は高級オーディオになるにつれて、電源はガチガチに金属板で電磁シールドするか、もしくは遠くへ離す、という結論に至るので、ACアダプターは合理的な回答でしょう。

オーディオマニアにACアダプターが嫌われている最大の理由は、オーディオメーカー自身が自作せず、適当に安価な汎用品を選んで同梱しているケースが多いからだと思います。これは手抜きというよりも、海外輸出の際に各国の安全基準(たとえばCEマーク)取得済みのACアダプターを現地調達するほうが楽だから、という理由もあります。

iFi Audioの場合、同梱しているACアダプターも「iPower」という名称で、自社監修の低ノイズ良品ということで、下手なトランス電源とかよりも優れていますが、どれだけ良質な電源であっても、ACアダプターから本体までのDC電源ケーブルにノイズが乗らないよう注意する必要はあると思います。

デザイン

友人の試聴機をバラバラに分解するわけにもいかないので、内部写真は公式サイトからのものを参考にしました。

公式サイトから、Pro iCANの内部写真


電源基板を外した状態

それにしても、ただのアナログヘッドホンアンプとは思えないほど高密度な中身です。ラックスマンP-700uのようなスパゲッティ迷路も見応えがありますが、このPro iCANは、むしろ近未来都市計画のような、ケーブルを徹底排除した整然とした佇まいがカッコいいです。

とくに、電源に至っては、ACアダプターだと難癖をつけるにも、実際は基板面積の三割以上は電源のアイソレーションや安定化回路に割いているので、他社の生半可な内蔵電源なんかよりも数倍ゴージャスな設計です。

向かって右側は、二本の真空管と、モーター付きボリュームポットが見えます。わざわざポット下の基板に金文字でALPSロゴを誇らしげに印刷してあるのが面白いですね。ALPS社が泣いて喜ぶと思います。

真空管はGE製2C51・5670双三極管の新古品を採用しています。これはmicro iTube/iTube 2と同じ物のようですが、バランス駆動のために二本搭載しています。

iFi Audioはこの5670管をずいぶん気に入っているようで、あえて最新製造の12AU7選定品などではなく、マイナー管の新古品をわざわざエージングして、安定特性を得たもののみを搭載するという入れ込み具合です。

また、他社のアンプ用にと、5670+変換ソケットで6922(ECC88)として使える互換品も単品販売しているので、相当なマニア具合です。

ちなみに、Pro iCANにおける真空管というのは、KTやVTのような巨大なパワー管や整流管を陳列したオール真空管というわけではなく、入力バッファにおける回路のみをトランジスターと真空管が選べるという仕組みです。

一方、他社のオール真空管ヘッドホンアンプというと、あちらはあちらでコアなマニア市場が既に形成されていますし、あえてiFiが踏み込む必要は無いでしょう。直結だBTLだ無帰還だと、何が正しい真空管駆動なのか宗教派閥のようにエンドレスな争いが50年以上繰り広げられているので、私自身はあまり積極的に足を踏み入れたくない分野です。(とりあえず何を買ってもマニアに難癖を言われるので)。

そのため、iFi Audioのように真空管はあくまで「回路内で音質を決定づける重要な素子」として扱う柔軟性は良いと思います。(もちろんまた根暗なマニアから「これは真空管アンプと呼ぶにはふさわしくない」とか文句を言われそうですが・・・)。

トランジスター回路は基板裏面にあり、micro iCAN SEやmicro iDAC2などで培ってきたJFET受けディスクリート回路設計の発展型のようです。それらのモデルでは「トランジスターなのに、まるで真空管のような」という意味を込めて「Class A Tubestate」という名称だったわけですが、今回は本物の真空管も入っているので、なんだか本末転倒なネーミングになってしまいましたね。

Pro iCANの基板中央は、強力なヘッドホン駆動回路が、表裏両面でけっこうな面積を占めています。BJTゲインとMOSFETバッファという構成で、これもmicro iCAN SEのアンプを発展させたものです。

こうやって部分ごとに眺めていると、micro iTube 2とmicro iCAN SE相当の回路が、それぞれバランス駆動のために二倍の規模になって、さらに各エリアごとの電源安定回路と、バランス対応のモーター付きボリュームと、素人計算でも高価な値段は仕方がないなと思える充実した内容です。

ようするに、あえて奇抜なことはせず、これまでのiFi Audioの音質設計を尊重しながら、コンパクト機microシリーズでは実現できなかった部分を重点的に強化したような設計です。いろいろ合わせて、よく妥協せずここまで詰め込んだなとつくづく感心してしまいます。

電源について

ところで、Pro iCANのACアダプターという手法は、今回の試聴時にも、ソースとの接続には最初ちょっと悩まされました。

スイッチング式ACアダプター電源というのは基本的にグラウンドがアースにしっかり落ちていないため、本体の電位が浮いている状態です。つまり他の機器と接続して初めて相手側のグラウンド(0V)に落ち着く仕組みです。

RCA接続であれば外側のリングで、XLRであれば1番ピンで0Vを受け渡しています。つまり熱気球をロープで地面にしっかり固定するような感じです。

そのため、たとえばDAPなど、バッテリー駆動で接地されていない機器を接続すると、手で触ったり、置き場所を変えたりといったことで、「ブーン」とか「ジーッ」というノイズが発せられることがありました。

AK DAPからのバランス接続で悩まされたのは以前AK KANNの時に話しました。アンバランスなら大丈夫だと思いきや、ラインケーブルで送られる電流は微々たるものなので、しっかりした短距離シールドケーブルなどでないと、付近の電磁場環境を敏感に拾ってしまう「アンテナ」のように振舞ってしまうため、注意が必要です。

とくに、最近流行りのオーディオサーバーやパソコンのサウンドカードなど、他のスイッチング電源式機器と連携させる際には十分な配慮が必要です。Pro iCANに限らず、アンプのトラブルや音質劣化(透明感や音抜けの悪さ)の多くはグラウンド関連だったりします。オーディオマニアといえば高価な電源タップとか「マイ電柱」や「発電所で音が・・」なんてネタにされていますが、それ以前に、まず周囲の電源環境をちゃんと確認整理することが大事です。

出力とか

いつもどおりPro iCANの出力電圧を測ってみようと思ったのですが、いろいろと面倒臭かったので、とりあえず特定条件のみテストしてみました。

入力はアンバランスRCAで2Vrms(5.65Vpp)の1kHzサイン波信号、「Solid State」モード 、 ゲインスイッチは最大(+18dB)で、6.35mmと3.5mmアンバランス出力での最大電圧を測ってみました。

2Vrms入力で、最大ゲイン&最大ボリューム

ごらんのとおり、6.35mm出力端子は最大で30Vも出せるような超高出力で、一方3.5mm出力端子はイヤホン用ということで出力が制限されています。ちなみにグラフがカクカクしているのは、アナログボリュームなので、歪み(THD)を1%以下(つまり綺麗なサイン波が得られる)ところまでボリュームノブを調整するのが結構アバウトだからです。つまり、数値的にはあまりアテにしないでください。

アナログアンプなので入力ソース電圧とゲインの掛け算によって出力電圧も変わってしまうことと、XLRや6.35mm、3.5mm、トランジスター、真空管など、あまりにも組み合わせが多すぎて、全部網羅していたらキリがありません。

それと、電圧の上限を測ろうとしてみたところ、非現実的な使い方をすると安全回路が作動するため、それをあえて繰り返すのも怖くて止めました。

ちなみに3.5mm出力端子はボリューム制限されているものの、いわゆるアナログアッテネーターなので、最大ゲイン(+18dB)で無理な使い方をすると歪みますし、安全回路が作動します。つまり3.5mmで+18dBモードを使うほどであれば、6.35mm出力を使うべきです。

ところで、アンプの出力後にアッテネーターを通しているということは、アンプの出力インピーダンスが悪化するのではと思いテストしてみました。

6.35mmと3.5mm端子では出力インピーダンスが若干異なります

出力電圧が1Vp-pになるようにボリュームノブを調整してみたところ、やはり3.5mm出力端子のほうが若干出力インピーダンスが高いです。つまり低インピーダンスでばらつきの広いマルチBA型IEMなどでは、音色に若干のクセが付くかもしれません。大出力の据え置き型アンプとしては一般的な特性です。

Tube+モードのみ若干電圧が低いです

あと、Solid StateとTubeモードはほぼ同じ音量ですが、Tube+モードのみ電圧が若干下がります。

音質とか

試聴の機会は何度もあったので、最近よく使っているベイヤーダイナミックDT1770とHIFIMAN HE-560、Unique Melody Mavisなど、他にもいろいろなイヤホン・ヘッドホンを、バランス・アンバランス問わず試してみました。

ソースDACには色々使ってみました

ソースはmicro iDAC2、AK KANN、Plenue S、Chord Hugo TT、Questyle CAS192Dなど、その都度身近に合ったものを手当たり次第に試してみました。

個性が強いアンプなので、あまりソースごとの音質差を気にする必要はありませんでした。個人的にはやはりmicro iDAC2が好みですが、Hugo TTのほうが情報量は多い感じです。KANNのようなDAP直挿しでも十分楽しめましたので、許容範囲の広いアンプです。

「Solid State・Tube・Tube+」の三つのモードは電源を落とさずにスイッチを切り替えるだけで即座に選べます。ブチッという音を避けるためミュートリレーが作動するので、切り替え後は音が出るまで5秒くらいかかります。そのへんの設計はしっかりしています。



ブルーノート・レーベルから5月の新譜で、ルイス・ヘイズ「Serenade for Horace」を96kHz・24bitで聴いてみました。ホレス・シルヴァーへのトリビュートアルバムということで、当時に縁のある大御所ドラマーのヘイズがリーダーです。

ヘイズはシルヴァー1959年の名盤「Blowin' the Blues Away」や「Finger Poppin'」などでもドラマーを務めた当時を知るベテランで、今回のアルバムでも齡80歳とは思えないタイトなドラミングを披露してくれます。どんなジャズでも軽々とこなすヘイズですが、それでいてやっぱり、「三つ子の魂百まで」というか、デトロイト出身らしい(同郷のドナルド・バード、フラナガン、バレルなど)暖かく内省的でメロディのサポートにこだわるスタイルです。

このアルバムは、最新録音としては驚くほどに正統派ハードバップで、シルヴァー現役の1960年代にタイムスリップしたかのような気分にさせてくれます。しかもハイレゾ高音質、というギャップが面白いです。トランペットのJosh EvansやピアノのDavid Bryantも、まだ30代の若手なのに当時のハードバップらしい演奏のオマージュが絶妙に上手いです。曲の構成から展開まで、気分をほっこりさせてくれるリバイバルが味わえました。名曲「Song for My Father」だけ、今をときめく色男グレゴリー・ポーターの歌入りなのも良い感じです。

このアルバムでは、主にHE-560とDT1770を使って、トランジスター(Solid State)と真空管(Tube、Tube+)モードの音質差を聴き比べてみました。

どっちが良いか悪いか、というものでもないのですが、特にジャズでは「Tube」モードのサウンドが素晴らしかったです。真空管らしいサウンドでありながら、真空管アンプの不利な点(帯域とかノイズとか)を克服したとメーカーが主張しているだけあって、実際に聴いてみると説得力があるので、さすがその辺の塩梅をよくわかって作っているなと感心します。

高域が低域がといった具体的な違いは無いのですが、Tubeモードは音の飽和のしかたが絶妙に美しいです。飽和というと悪い事のように聞こえてしまいますが、それ以外に上手な表現が思い当たりません。たとえばトランペットやシンバル、そしてこのアルバムだと特にヴィブラフォンとか、高域まで音色がよく伸びる楽器で(あと女性ボーカルとか)、音色の一番上の方の天井部分が絶妙に真空管っぽく響いてくれます。注意して聴いて一度理解できればすぐわかるタイプの特徴的な響き方で、なんというか、50年代の名歌手の声の粒立ちの「あの」サウンド、と言えば納得してくれるかもしれません。

ハイレゾの広報じゃないですけど、本来なら人間の耳では聴こえないくらい高い周波数まで突き抜けるようなサウンド、というのが理想的に思えるかもしれませんが、実際はマイクや楽器には必ず倍音が活きる上限があり、その辺の処理がとても大事です。Pro iCANのTubeモードは、音色であれば倍音成分が活性化し、それ以外の雑多音は強調されないため、結果として、楽器や歌手の音色に立体的で暖かい輪郭みたいなものが生まれ、いわゆる「メリハリ」や存在感がはっきりと現れます。文句の言いようがありません。

もう一方の真空管モード「Tube+」は、公式の説明によると、回路の負帰還を控えめにして、より真空管っぽいサウンド、らしいですが、個人的な感想としては、なかなか使いどころが難しいと思いました。「Tube」モードとは性格が異なります。「Tube」モードが豊かさや美しさを演出する効果であれば、「Tube+」はむしろ「引き算」のような感じで、音色の核心のみを愛でて、それ以外の雑味を綺麗に取り払ってしまうような感じでした。楽器の音色は普段以上にツルツルで際立っているのですが、全く別物のリマスター録音を聴いているような気分です。他のモードとくらべて音量も若干静かなので、聴き比べも難しいです。

たとえば「Solid State」が美しい南国の風景写真で、「Tube」モードがカラーイラストであれば、「Tube+」はさらに昔のリトグラフ印刷ポスターのようです(ロートレックのポスターとかを連想します)。すでに録音に空気感や臨場感がたっぷり入っている音楽であればTube+は逆効果になってしまいがちですが、その一方で、たとえばビリー・ホリデイとか、ダイナミックレンジが狭くノイズに埋もれている古めのボーカルアルバムでは、本来不足している「雰囲気」を絶妙に作り上げてくれるので、そういった意味で特別なモードです。試聴に使った最新ハイレゾジャズアルバムでは相性が悪かったですが、1950年代フランスVogueレーベルとかのモノラル録音を堪能するには素晴らしいです。

ところで、これらTubeモードは、同社「micro iTube 2 & micro iCAN SE」と比べてどうなのか、というのも気になるところですが、ちょっと聴き比べてみたところ、Pro iCANの方が好みの音色でした。microシリーズの組み合わせは、橋渡しのRCAケーブルや電源などの外来要素もあるので一概には言えませんが、やはり真空管らしさの後付け、みたいな感じがつきまといます。個人的にこれまでmicro iTube 2の購入を躊躇しているのもそのせいです。その点Pro iCANの方が、メーカーの狙いがしっかり伝わるというか、各モードごとに独立した個性を尊重しているような感じです。メーカーの受け売りになってしまいますが、やはりmicro iTube 2の場合、真空管バッファアンプを通った後に、さらにmicro iCAN SEのトランジスター入力バッファーを通る二段構えの冗長性が、少なからず音質に影響を与えているのかもしれません。

Tubeモードが素晴らしく、そればっかりになってしまいましたが、トランジスターの「Solid State」モードも真空管に負けず劣らず、とにかくエネルギッシュでパワーに満ち溢れています。Tubeモードと比べると高音域のパリッとした感じが目立ち、暖かいというよりはクリアで明るく鮮やかなサウンドです。たとえばハイハットの鳴り方が大きく変わります。このサイズのデスクトップアンプとしては、たとえばMytek BrooklynやRMEのようなサラサラしたモニター調すぎる無味無臭でもなく、Benchmark DAC2・3ほど硬質でもありません。

また、トランジスターというと、私が普段聴き慣れているViolectric V281やSimaudio MOON 430HADなどはドッシリ、ゆったりと構えた雰囲気ですが、Pro iCANの方が低音から高音まで全部余すこと無く目の前に披露するような凄みを感じさせます。自動車に例えると、V281と430HADはSクラスのリムジンみたいな、長距離移動で疲れない意図的な「ユルさ」があり、一方Pro iCANはAMGのCクラスみたいな、どんな状況でもドライブの楽しさを引き出すような意気込みがあります。変な言い方ですが、V281や430HADは、落ち着いた音色に浸って眠くなってしまう事もあり、Pro iCANは目覚ましい音色が注意を求めるようです。もちろんどちらも明確な欠点の少ない、非常に高い水準での話です。

Pro iCANの「Solid State」モードは、同じメーカーだけあってmicro iDSDと似ていますが、それよりももうすこし「ちゃんとドライブしている」ような中域の骨太な充実感があり、必要以上にパシャパシャと高域を振り撒くような感じもありません。このドライブ感はやはりmicro iCAN SEに近いと思いました。とくに、旧モデルmicro iCANでは帯域ごとのばらつきがあって、ヴァイオリンとかの音色が飛び出したり引っ込んだり、雑になる印象がありました。その辺がPro iCANとmicro iCAN SEのどちらもずいぶん改善されて、「耳障り」な帯域が気にならなくなったので、これら二つのモデルが同時進行で開発された、というのもサウンドを聴くと納得できます。

私自身は最近micro iDSDのスペシャルモデルBlack Label (BL)を日々愛用しています。職場オフィスの限られたスペースで、USBケーブル一本で高パワーと高音質が得られる傑作です。このモデルのサウンドもiFi Audioらしくクリアでダイナミックなのですが、Pro iCANとは一味違うと思いました。micro iDSDの特徴は、DAC内蔵ということでデジタル信号からヘッドホンアンプまで一貫した設計で、デジタルデータが濁り無く耳元まで届くことです。全ての情報をじっと目をつぶって集中して余すこと無く堪能する、といったスタイルで、とくにBlack Labelではそんな魅力が増しています。一方Pro iCANは、よりアンプとしての個性があり、DACなどの上流ソースにあまりこだわらずに、ヘッドホンをグイグイと駆動して音楽の魅力を引き出してくれます。


LINNレーベルから先月の新譜で、Thomas Søndergård指揮BBCウェールズ交響楽団のシベリウス交響曲1・6番のカップリングを聴いてみました。ちなみにこの指揮者はそこそこキャリアがあるのに、未だにカタカナ表記が定まってなくて可哀想です。ちょっと検索してみただけでも、ソンダーガード、ゼンダーガルド、センデゴー、セナゴーなんて色々ありました。本人はどう呼ばれたいんでしょうね。

LINNといえばスコットランドの超有名オーディオブランドですが、レコードレーベルとしても活発に活動しています。他でよくありがちな「高音質だけど三流演奏家ばかり」の手前味噌レーベルではなく、BBCラジオ局との提携など、地域密着型でかなり真面目なレパートリーに取り組んでいるところが良いです。今回のシベリウスはLINN公式サイトから直販で192kHz・24bitハイレゾダウンロードを購入しました。

演奏自体は非常に良いのですが、ライブコンサートというよりは、オーケストラ売り込み用デモテープかのごとく「俺の演奏を聴いてくれ」と言わんばかりのグイグイ迫りくる録音です。それもそのはず、ウェールズ首都カーディフにあるホディノット・ホールという350人程度の小型ホール(というかBBCセッションスタジオ)での録音なので、残響が短く明確で、まるで指揮者のポジションで全楽器を間近で聴いているようなスリリング体験です。最近のオーケストラアルバムというと2000人規模の大ホールでのライブ公演を録音することが主流で、今回のようなスタジオ録音自体が珍しくなっています。

かなりギラギラした歯切れのよいサウンドで、弦も鋼鉄のようにギュンギュン鳴るので、ふわっとした北欧のオーロラみたいなシベリウスを期待していると落差が激しいですが、これもこれでオーディオファイル向けレーベルらしくてアリだと思いました。奥行きやステレオ展開の深さや各楽器の分離は圧倒的なので、「なんだかものすごい高音質っぽい」大迫力オーケストラサウンドを味わいたい人、自宅システムを見せびらかす用のデモアルバムを探している人には是非オススメしたいアルバムです。

このアルバムの場合、「Solid State」と「Tube」モードのどちらで聴くべきか迷いました。弦の鉄っぽいキンキン感はTubeモードでずいぶん落ち着きますし、ホルンなど金管も美しさが倍増します。一方、音楽全体の構成や臨場感はSolid Stateの方がリアルで、全体像が無理なく耳に入ってきます。気分次第でモードを切り替えればよいので、あまり深く考えるほどのことでもないですね。

IEMイヤホンとの相性がとても良かったです

ここまでDT1770やHE-560など、いわゆる大型ヘッドホンを使っていたのですが、せっかく3.5mm端子が(しかもバランス出力も)登載されているため、IEMイヤホンを試してみたところ、これが意外と良い感じに楽しめました。特にTubeモードは、普段DAPで聴きなれたサウンドとは一味違う未知の体験です。

たとえば普段愛用しているUnique Melody Mavisや、借り物のNoble Audio Kaiser 10 Encore、Katanaなど、個人的にとても気に入っているイヤホン勢が、どれもPro iCANを通すことで新たな表情を見せてくれます。

ゲインも丁度良いように調整されており、すぐに爆音になるのではなく、ボリュームノブ半分くらいまでしっかり使えるような設計ですし、感度が高すぎてホワイトノイズが目立ちやすいCampfire Audio Andromedaでも、一切ノイズに悩まされることなく快適に楽しめました。

3.5mm端子の出力インピーダンスは最近の高性能DAPよりも若干高いので、特に15Ω以下になるようなマルチBAイヤホンでは周波数特性にクセがつきやすい、というのもありますが、単純にそれだけでは説明できない特別な魅力に溢れています。

具体的に何が凄いのかというと、特にマルチBAイヤホンなど、十分な解像感やクリア感があるイヤホンは、Pro iCANを通すことで、スケールの大きさ、空間配置がビシッと決まる感じ、ヴァイオリンなど楽器の聴き惚れるような芳醇さ、など、音楽鑑賞の楽しさが倍増する潜在能力を引き出してくれます。間近でテキパキと解像感を際立たせるのではなく、シベリウスらしい何層にも重なる霧のような響きの漂いが、立体的な奥行きを持つことで再現できています。

他では味わえないサウンド、つまり悪くとらえれば「クセが強い」と言えるかもしれませんが、こういうのは、百聞は一見に如かず、というか、実際に興味本位で聴いてもらえれば、思わぬ収穫があるかもしれません。


レーベル運営のダウンロード直販で、もう一つお薦めしたいのは、ボストン交響楽団の公式サイトから購入できるアンドリス・ネルソンス指揮ブラームス交響曲集です。2016年のライブ公演録音を192kHz・24bitハイレゾで販売しています。

ボストンというと日本人にとっては小澤征爾さんで親しみ深いですが、その後レヴァインを挟んで、2014年からはネルソンスが音楽監督のポストを務めているので、なまじ客演では味わえない手慣れた一体感があります。同コンビがドイツ・グラモフォンで最近出しているショスタコーヴィチシリーズは幾つもの賞を獲得しており、今回のブラームスは独自レーベルですが同じ制作チームだそうです。

音質はふわっとしていて若干遠めで空気感たっぷりなので、ボストンらしい、フランスゆずりの弦の滲みや管楽器の優しさが活かされています。その反面、演奏はかなりインテンポでピッタリ統制が取れており、きっちりコントロールした安全運転なのに、4楽章通して知らぬ間に徐々にパワーを盛り上げていくという巧みな構成です。爆発的なスケールの最終楽章でも、細かい部分までアンサンブルが乱れず鳴らしているのがすごく優秀です。個人的に一番好きな交響曲2番も、これまで聴いた中でトップ3に入ると思う素晴らしさです。解釈は色々あるので趣味は分かれると思いますが、「上手い指揮者とオケは凄いなー」と素直に感心させてくれるアルバムであることは確かです。

このアルバムは、先程のLINNレーベルのシベリウスほど楽器を全面的に押し出した録音ではないので、Pro iCANはSolid Stateモードで、コンサートホール空間全体を観客席から味わうような聴き方が楽しめました。

Solid Stateモードで聴く交響曲は、Tubeモードとは対象的に、臨場感が明快で、緩みの無い音作りです。中低音は十分あるので、軽いキンキンしたサウンドというよりは、勢いがあり鮮烈といったイメージです。

他社のトランジスター型ヘッドホンアンプは、あまりシャープすぎると嫌がられるので意図的に太くゆとりのあるマイルド具合にチューニングしがちなのですが、一方Pro iCANはあえてTubeモードとは対極になるような、トランジスターでしか味わえないサウンドを強調する仕上がりです。

つまり、Tubeモードが真空管らしい「味付け」であれば、Solid Stateモードはトランジスターらしい「味付け」を意識しているかのようです。いくらSolid Stateモードの方が測定スペックが優れているからといっても、あくまでトランジスターと真空管モードは表裏一体だという考えでないと、面喰らってしまうかもしれません。

無駄な緩み膨らみの無いシャキッとしたサウンドなので、たとえば低音が響きがちな密閉型の大型ヘッドホンなどは上手に整えて空間余裕やスケール感を出してくれるため相性が良いです。普段は若干眠く感じるAudioquest NightOwlなんかも、Pro iCANのSolid Stateモードで鳴らせば集中力が増して「結構良いじゃないか」と思えて、ずっと聴き続けたくなってしまいました。また、Focal Elearのような、温暖ゆったり系の開放型ヘッドホンでも、低音の覆いかぶさる感じが改善されて相性が良かったです。

せっかくなので、3D Holographic機能を試してみたところ、これが結構効果的で面白かったです。micro iDSDに搭載されているものと基本的に同じですが、Pro iCANは3段階に調整できるので、効果がわかりやすいです。

ステレオの位相がしっかりしている自然な録音であるほど効き目が薄い、というのはmicro iDSD同様ですが、それでもノブを最大まで回せばかなり効きます。たとえば、試聴に使ったクラシックのライブコンサートの場合、脳内のオーケストラ全体を両手で持ち上げて、前方50センチくらい先に置いたような頭外感覚が得られます。その分ステレオの広がりはコンパクトになるので、いわゆる「サラウンド」とは正反対の意味で「ホログラフィック」という名称が納得できる効果です。

普段はOFFでも良いですが、古いジャズやポップスなど、ステレオの位相狂いが強すぎてヘッドホンでは違和感を感じる録音も多いので、使い方に慣れれば、ここぞという時に非常に重宝するエフェクトだと思いました。

一方、XBassノブは、全開(40Hz)まで上げても、そこまでピーキーで派手なブーストではなく、フワッと音色の暖かみが増すような感じでした。あえてそこまで必要だと感じたことも無かったため、試聴時には多用しませんでしたが、使いやすい仕上がりだと思います。効果がくどすぎる、という感じではないのが良いです。

キックドラムをボンボン弾ませる用途というよりも、むしろNaxosやソニーみたいに低音がドライすぎるクラシック録音であったり、AKGやオーテクなどの線が細い開放型ヘッドホンで、ちょっとだけ雰囲気の豊かさを付け足す、といった補助的な使い方に向いていると思いました。

おわりに

Pro iCANヘッドホンアンプは、まさにiFi Audioというブランドの個性を詰め込んだ集大成のようなモデルです。

内部の設計も、iFi Audio製品ラインナップをしっかりと熟知したベテランスタッフ勢が、現時点におけるノウハウを惜しみなく投入したような印象を受けます。さらにフルバランス設計にしたことと、各回路の受け渡しや電源回路の高品位化によって、これまでのmicroシリーズよりも確実なグレードアップを果たしています。

とくに、Tubeモードでのサウンドは、iFi Audioの狙い通り、真空管ならではの艷やかな響きとトランジスタ駆動の静粛性が両立しており、非常に楽しめました。

一方Solid Stateモードは対照的に目が覚めるようなクリアサウンドで、真空管とは違うということを意識したような仕上がりです。

どのモードもiFi Audioらしく、曖昧さの無い、明確な狙いを持ったサウンドなので、特出して「これは凄い」と感動することもあれば、人によっては飽きが来るのも早いサウンドかもしれません。気分に応じて三つのモードで使い分ける事を前提に、あえてそういったチューニングにしているのだと思います。

当然のごとく、大型ヘッドホンをしっかり駆動できるパワーを備えているので、もちろんそのための用途で購入するのが真っ当だと思います。また、マルチBAなどのIEMイヤホンも思いのほか楽しめたため、あえてそれ専用で導入するのもアリかもしれません。

最近では、オーディオ趣味といっても高級DAPとIEMイヤホンのみに絞って「買い換え・買い足し」で散財しているマニアが多いと思いますが、「大型据置きアンプは大型ヘッドホン用で、IEMはDAPで十分」という先入観を捨てて、是非体験してもらいたいです。

このPro iCANというヘッドホンアンプは、イヤホン・ヘッドホンを問わず、120%の性能を引き出してくれるような規格外のポテンシャルを感じさせてくれます。つまり、普段聴き慣れたヘッドホンを使うことで、そのレベルアップ感に驚く、そんなところが良い意味で「アナログ的」で、「オーディオファイル的」だと言えるのかもしれません。