2017年2月11日土曜日

iFi Audio micro iDSD BL (Black Label) のレビュー

英国のオーディオメーカーiFi Audioから最新作「micro iDSD BL」が登場しましたので、感想とかをまとめてみました。

iFi Audio micro iDSD BL

バッテリー駆動式の常識をくつがえす強力なヘッドホンアンプと、最高レートPCM 768 kHz・DSD512に対応するUSB DACを組み合わせた、超ハイスペックなモデルです。

2014年に登場したベストセラー「micro iDSD」のブラック版ということで、一見ただのカラーバリエーションのように見えますが、実は音質アップのために内部パーツがアップグレードされたスペシャルモデルだそうです。

私はこれまで通常版(銀色)のmicro iDSDを長らく使っており、iFi Audioというメーカーの熱意と活発さにはつくづく感心しているので、今回はアップグレードという口実で「Black Label」を購入してみました。


通常モデルからの変更点

iFi Audioというと、これまでは銀色にに統一されたブランドイメージがあったのですが、今回「Black Label」ということで、本体カラーが特別にマットブラックになりました。

銀色すぎて、わけがわかりません(全部違う商品です・・)

ラインナップ唯一のブラックモデルというだけでも目立ちますが、中身にもかなり手を入れているようで、通常モデルをベースに、下記のような変更点があるそうです。
  • 電源、アナログアンプ、クロック回路の高品位化
  • 3D Holographic+とXBass+効果のチューニング変更

といった感じで、とくに基板上の部品単位で目立つポイントとしては、
  • オペアンプを特注品に変更
  • コンデンサの多くをパナソニックOS CONなど高級品にアップグレード
  • 重要な抵抗を高級品にアップグレード

など、細部において音質アップを試みています。

公式サイトから拾ってきた、Black Labelの変更点です

これら以外の部分では、これまでの通常モデルmicro iDSDと全く同じなので、たとえばUSB DACの対応フォーマットとか、ヘッドホンアンプの出力レベルとか、そういった実用上での違いは全くありません。ファームウェアやドライバも両モデルで共通しています。

ちなみに、後継機といった扱いではなく、通常モデルも並行して販売を続けているので、このBlack Labelというのは「値段がちょっと割高のスペシャルモデル」という位置付けのようです。

右側にXMOSのUSBインターフェースが見えます

DSD1793チップを2枚搭載、大量のOS-CONが目立ちます

USBインターフェースはXMOS系で、D/A変換チップはあいかわらずiFi Audio御用達のバーブラウンDSD1793をデュアルで搭載しています。独自のプロセッサICを通してDSD1793を直接駆動することにより、PCM 768 kHzやDSD512(22.4MHz)といった高レート音源にも柔軟に対応できる超ハイスペックを実現できた、ということで、2014年発売当時に注目を浴びました。

2017年現在でも、ここまで高スペックなハイレゾフォーマットに対応できるUSB DACはなかなかありません。実際に必要かどうかは別として、ちゃんと自社設計できるということが、メーカーの自信と高い技術力を表しているので、悪い気はしません。

欧米のネット掲示板などで、「なぜiFi AudioはESS Sabreや旭化成AKMみたいな最新DACチップを採用しないで、こんな古臭いバーブラウンなんて使ってるんだ」なんて苦言をする人が定期的に出没するのですが、そのつどiFi Audioの中の人は、律儀にDSD1793チップの音質メリットや有用性を説いています。むしろ最新流行のD/Aチップを搭載していても音が悪いUSB DACは散見するので、もはやそれだけでセールスポイントになるようなご時世でもないでしょう。

私自身も、現在主流なESS9018K2MやAK4490EQのような低価格+省エネ重視のオールインワンD/Aチップも良いと思いますが、バーブラウンのような旧世代の据え置き型CDプレイヤー用に設計された、消費電力を惜しまず、実直にデジタル入力をアナログ変換するタイプのD/Aチップには、なんとなく特別な魅力を感じます。

とくにmicro iDSDに登載されているDSD1793や、有名なPCM1792といった、2000年代初期のバーブラウン社独特のアドバンスド・セグメント式という、24bitのうち上位6ビットはアナログスイッチに送り、下位18bitはデルタシグマDACを通して、それらをアナログ合成するという、マルチビットとデルタシグマ両方のメリットを活かしたユニークな手法は、他に類を見ません。

最近では、たとえばAstell & KernがAK380など第三世代DAPにて旭化成AK4490に移行して、これまでAK240などで採用されていた旧世代の名チップ「シーラスロジックCS4398」から卒業したように、どのメーカーもスマホ時代の省エネな新鋭チップに世代交代しています。ノスタルジーと言われるかもしれませんが、そんな世の中だからこそ、iFi Audioのような独自性をキープする試みは、2014年当時よりも一層魅力的に感じられます。

TPA6120A2の上にある三つのオペアンプがiFi Audioの特注品です

Black Labelのヘッドホンアンプ回路には、通常モデルと同様に、ポタアンではおなじみのTPA6120A2アンプチップを中心に据えています。

iFi Audio以外にも、ソニーPHAシリーズなどにも採用されており、一般的にはこのチップ単独でそこそこの性能のヘッドホンアンプが作れるのですが、micro iDSDの場合はこれをあえて電流バッファのみとして活用して、前段に電圧ゲイン用オペアンプ回路、そして後段にバッファ用オペアンプ回路を搭載することで、より贅沢な柔軟性のあるヘッドホンアンプ設計になっています。

通常版micro iDSDのオペアンプは、たしかゲインがOPA1642で電流バッファがOPA1662とかだったと思います。

今回Black Labelでは、これらのオペアンプをiFi Audio専用の特注品に変更したということが、重要なポイントとなっています。オペアンプの特注というのは、半導体製造メーカーに最小ロットでも数万個単位を注文しないといけないので、なかなか他では例を見ない試みなのですが、最近どのメーカーも横並び感のあるポタアン市場においては、かなり注目度が高いチャレンジだと思います。

公式サイト写真から、OFCとゴールド線を採用した特注品だそうです

具体的になぜ特注するメリットがあるのかというと、通常のオペアンプではコスト優先で安価なアルミ配線などを使うところ、特注品はiFi Audioの指定により、外部配線と接続するリードフレーム(いわゆる「オペアンプの足」)をHC-OFC銅で作り、中身の回路と足をつなげるボンディングワイヤには4N(99.99%)の金線を採用したそうです。

公式サイトによると、ゲイン用のバイポーラ入力型はOV2028、後続のFET入力型はOV2627という名前を付けたそうです。

実際にどのオペアンプ回路をベースにしたのかは明確にされていないので、もしかすると従来と同じオペアンプの金属配線材のみを変えただけかもしれませんが、名前を見ると、1028と627の2回路入りかも、なんて自作マニア的にはワクワクさせてくれるネーミングセンスです。

なんにせよ、こういうのは採算が合わない道楽の世界なので、遊び心があるメーカーだなとつくづく感心します。

費用対効果で考えれば、こんなことをせずとも、多機能なワンチップに全てを任せるほうが簡単で合理的なのですが、逆に、各回路の役割分断を明確にして、それに合ったICや電源管理をしっかり作り込んで、トータル設計ができる技量さえあれば、さらなる音質向上に繋がる道が拓ける、という考え方自体が、高価なハイエンド・オーディオの存在意義でもあります。

そんな中で、回路内のオペアンプが音質において重要な役割を果たしているからこそ、多くのメーカーはむしろオペアンプを排除したディスクリート構成を好んで選ぶのですが、そこでiFi Audioはあえて高級な特注品オペアンプを試作してみようと決断したのが面白いです。

誰しも同じことを考えてみることはあっても、アマチュアの自作レベルで実行に移すのは容易ではありません。

「ピュアオーディオ」っぽい考えだと、あまりアナログ回路にゴチャゴチャとアクティブICを通すのは嫌だ、という主義の人もいるとは思いますが、このレベルの回路設計になると、測定機器の限界に迫るレベルの低ノイズや低歪みが得られるので、「シンプルな方が高音質だ」とか、そういった口先だけの格言やポリシーは通用しない次元です。

また、オペアンプやチップアンプICというのは、回路の電源電圧や、前後の受け渡しインピーダンスによって表情がガラッと変わるので、他社の典型的なポタアンよりも駆動電圧が高いmicro iDSDでは、「このオペアンプだとこういう音がするだろう」といった経験論はあまり参考になりません。

結局は、回路とかICチップとかよりも、リスニング時の感想が全てなので、中身が複雑な方が高音質とは限らないのですが、私みたいな小手先のマニアの場合、そういった「メーカー渾身の新設計」なんてネットニュースとかで読むと、「そこまで主張するのなら、ちょっと聴いてみようかな」なんて気にさせるきっかけになるので、あながち無関係でもありません。

余談ですが、バッテリー未搭載のバスパワー駆動USB DAC「micro iDAC2」は、ほぼ上記micro iDSDと同じ回路なのですが、D/AチップのDSD1793が二枚ではなく一枚のみで、バッファオペアンプではなくディスクリートのトランジスタで組まれています。そのせいかどうかはわかりませんが、RCAライン出力用途に限っては、micro iDSD BLよりも、このmicro iDAC2のサウンドが好みで日々愛用しています。

パッケージ

本体カラーと音質以外では、機能も付属品も通常モデルのmicro iDSDと変わらないのですが、発売当時からかなり時間が経っていますので、もう一度興味を持ってもらうためにも、改めて紹介しようと思います。

パッケージは従来品と変わりません

上蓋をあけると、そのまま本体(とシリカゲル)が入っていました

その下にはアクセサリ類が入った紙箱があります

パッケージはこれまでのiFi Audio商品と同じ長方形の箱で、中には本体と、アクセサリの紙箱が入っています。

アクセサリ箱①

アクセサリ箱②

本体が多機能なだけあって、付属アクセサリ類も豊富です。USBケーブルはA→Bタイプ変換ケーブルとアダプタ、そしてそのままパソコンに接続できる青いAタイプ延長ケーブルがあります。

スマホとの間に挟むシリコン板や、両面テープ付きのゴム足、ゴムバンドや巾着袋、3.5mmヘッドホン変換アダプタ、角型TOSLINK光デジタルアダプタ、さらには高品質っぽいRCAケーブルなど、接続に必要なケーブル・アダプタ類を大量に同梱してくれるのは嬉しいです。

もちろんここからさらにケーブル類をアップグレードしたい人もいるでしょうし、iFi AudioもGeminiケーブルやiPurifierアダプタなどのアクセサリを販売しているので、深みにはまると色々買い足してしまいそうで危険です。

フロントパネルの端子とスイッチ類

背面の入出力端子

入出力端子をまとめると
  • ヘッドホン(6.35mm)出力
  • ステレオアナログライン(RCA)出力
  • ステレオアナログライン(3.5mm)入力
  • USB (オスAタイプ)入力
  • 同軸S/PDIF(RCA)入出力
  • 光S/PDIF(3.5mm)入力
  • USB給電(オスAタイプ)出力
といった感じで、とくにポータブル機で6.35mmヘッドホン端子がついているのは珍しいので案外重宝します。

本体側面と底面のスイッチ類

さらに、本体には切り替えスイッチがたくさん搭載されており
  • XBass+低音ブーストON/OFF
  • 3D+ホログラフィックサウンドON/OFF
  • RCAライン出力の固定・可変ボリューム切り替え
  • Power Mode(Eco、Normal、Turbo)
  • iEMatch(Normal、High、Ultra)
  • DACデジタルフィルタ(Normal、Minimum Phase、Bit Perfect)
  • Polarity正相・逆相(+、-)
というふうに、けっこう複雑難解です。たとえば電源スイッチとボリュームボタンのみのシンプルなChord Mojoとかと比べると、micro iDSDの方がいろいろ遊び甲斐があるというか、マニアックで敷居が高いイメージがあります。

前面の金属トグルスイッチ以外はゴム製スライドスイッチが多く、なにかに触れると偶発的に切り替わりやすいので、ポータブル用途では注意が必要です。とくにゲインスイッチで瞬時に爆音になりうるので心配です。

底面にはロゴとかが印刷されています

本体裏面は一見ブラックなのですが、光の角度によって、色々と印刷されているのが見えます。

「DSD」とか「Turbo」とか、様々なロゴが陳列されているので、なんだか「走り屋が愛車にステッカーを貼る」みたいな若干気恥ずかしい気持ちもありますが、あえて裏面のみにさり気なくアピールしているだけなので、まあ遊び心というか意気込みもわからないでもないです。

WBTタイプでギリギリです

背面のRCAアナログ出力端子は左右の間隔がけっこう狭いのですが、太くて有名なWBTコネクタでも無事に接続できました。

付属のゴム足と、USB電力供給ポート

ちょっとした小ネタですが、付属のゴム足は両面テープ式で任意の場所に貼り付けるタイプなのですが、よく見ると、iFiのロゴがしっかりと刻印されています。

ちなみに、緊急時に内蔵バッテリーからスマホなどを充電できるように、給電用USBポートが設けられています。個人的に、普段スマホを音楽鑑賞に使いたくない最大の理由は、バッテリーが減って肝心の通話ができなくなるのが心配なことなので、この給電ギミックはちょっと嬉しいです。

ボリュームノブにOリングを付けてみました

ボリュームノブを回すとカチッと電源が入るスイッチを兼ねているのですが、ツルツルと滑りやすいので、ホームセンターで買ったゴム製のOリングを装着して勝手にカスタマイズしてみました。

また、写真でもわかるとおり、ボリューム位置のマーカーがとても見にくいですので、これは白い塗料なんかを塗ってみようと思います。電源の切り忘れを防止するためにも、遠くからでもボリューム位置が見やすいような配慮が欲しかったです。

ヘッドホン出力

通常版micro iDSDと同じ結果になりますが、とりあえず出力を測ってみました。

ヘッドホン出力電圧

いつもどおり、0dBフルスケールの1kHzサイン波を再生している状態で、ヘッドホンのインピーダンスごとに、クリッピングが発生するまでボリュームノブを上げた時の最高電圧(Vp-p)です。

Power Modeスイッチで「Eco・Normal・Turbo」と出力を三段階に調整できるのですが、ご覧の通り、Turboモードはバッテリー駆動とは到底信じられないほど強烈な大電圧を発揮できます。

Ecoの時点ですでに6VでAK DAPと同じくらいの電圧が出ているということにも驚きますが、Turboの28Vというのはポータブル機としては尋常じゃなく高く、たとえばChord Hugo/Mojoの二倍は出ており、私が持っている据え置き型のLehmann Linearヘッドホンアンプと同じくらいの高電圧です。

能率の低い平面駆動ヘッドホンとかを駆動する用途でmicro iDSDが絶賛されているのも納得できますね。

ヘッドホン負荷が50Ωを下回るくらいから電流不足で一気に出力電圧が落ちてきます。一般的に、能率の低い高インピーダンスヘッドホンであれば、気兼ねなくTurboモードで余裕で駆動できそうです。

グラフ上の点線で、Normalモードでボリュームノブを意図的に1Vrms(2.8Vp-p)に合わせた状態を表しています。一直線で3Ωでも微動だにしない安定した出力を維持しているので、とくに低インピーダンスのマルチBA型IEMなどでも素晴らしい駆動が得られそうです。

いろいろ比べてみます

他のポタアンやDAPとかと並べてみると、Turboモードの高出力ぶりが圧倒的です。NormalモードでほぼChord Mojoと重なりますが、低インピーダンス側の出力はMojoよりも若干出ています。

実際、私の持っているヘッドホンはほぼNormalモードで十分で、Turboモードが必要とされることはめったにありません。

iEMatchスイッチの挙動

Power Modeスイッチとは別に、iEMatchというIEM用の出力アッテネータースイッチも登載しているので、今度はPower ModeスイッチはNormalにした状態で、iEMatchスイッチを切り替えた際の出力電圧を見てみます。

High Sensitivityで3.4Vp-p程度に落ちるので、このあいだ紹介したShanling M1とかの小型DAPと同じくらいの出力電圧です。Ultra Sensitivityで0.8Vp-pなので、これでようやくスマホとかと同程度の貧弱な出力になります。

これは、ようするに、高能率なIEMイヤホンで、爆音やホワイトノイズを防ぐためのアッテネーター的な使い方を想定しているようです。通常はOffの状態で使います。

ためしにIEMイヤホンの中でもひときわ能率が高いCampfire Audio Andromedaを使ってみましたが、さすがにNormalモードでは爆音すぎて、Ecoモードにしてもボリュームノブ30%くらいでもうるさいくらいだったので、iEMatchスイッチを使うことにしました。「Ecoモード+Ultra Sensitivity」という、出力が一番低くなるコンビネーションにすることで、ようやくボリュームノブが70%くらいで適正音量になるので、多分「Ecoモード+High Sensitivity」くらいがちょうどよいのでしょう。

ボリュームノブの注意点

micro iDSDは非常にパワフルな駆動力が人気なのですが、ボリュームノブの動作についてはちょっと注意が必要です。

いわゆるアナログボリューム(ボリュームポット)なので、低い位置だと左右バランスが崩れるギャングエラーが発生しますし、逆に上げすぎるとクリッピングする可能性があります。

ギャングエラーは個体差で変わるので、一概にどれくらいとは言えないのですが、私のやつの場合、ボリューム位置が20%を下回ったくらいから、左右バランスが極端に右側寄りになってしまいました。

さらに、アンプの出力電圧を設定するスイッチが、Power Modeスイッチ「Turbo・Normal・Eco」とiEMatchスイッチ「Off、High Sensitivity、Ultra Sensitivity」の二段階調整になっているので、それらの組み合わせしだいで、音量が低くてもクリッピングを起こす可能性もあります。

Power Modeスイッチ

iEMatchスイッチ

Ecoモードであれば、ボリュームノブを最大まで上げてもほぼクリッピング歪みは発生しないのですが、Normalモードだと、無負荷時でも約80~90%くらいから波形が潰れてしまい、Turboモードだと、60%くらいで潰れてしまいます。つまり、Turboモードは確かに28Vという高出力が出せるのですが、ボリュームノブの有効範囲としては、若干ハッタリの効いている仕様になっています。

Turboモードでそこまでボリュームを上げることは現実的にありえないだろう、ということで一件落着になるはずなのですが、音割れしたサウンドを、後続するiEMatchスイッチで音量を下げても音割れしたままなので、そこが注意が必要です。

たとえば、Power ModeをTurboで、iEMatchをUltra Sensitivityに合わせてしまうと、音量が小さいのに音割れしやすい、ということになってしまいます。

真空管アンプなどと同様に、歪みが案外「暖かみが増した」ように感じられるので、ちゃんとユーザーが理解して使わないと、「Turbo+Ultra Sensitivityの組み合わせはエキサイティングだ」なんて、知らずに歪み率30%とかで聴いている人もいるかもしれません。

つまり、ギャングエラーとクリッピングの両方を回避するためには、基本的にiEMatchは必要でなければOffで、ボリュームノブがだいたい50%くらいで適正音量になるようにPower Modeスイッチを設定するのが理想的だと思います。

ボリュームノブのクリッピング上限

ボリュームノブを上げていって、クリッピングまでの許容範囲を、ヘッドホンのインピーダンスごとに、大まかに調べてみました。縦軸がボリュームノブの上げ具合を表しています。

iEMatchスイッチを入れても同じ結果になるので、例えばTurboモードで10ΩのIEMを接続したら、どれだけiEMatchで音量を落としても、ボリュームノブ40%くらいから音割れすることになります。

ちなみにこれらはフルスケール信号(デジタルでの最大音量データ上限)でテストした結果なので、実際の音楽では常に最大音量データなわけではないですから、ここまで盛大にクリッピングするわけではありません。ただドラムやパーカッションなどの炸裂音が瞬間的に潰れたりするので注意が必要です。

スイッチの方向がわかりません

ところで、このゲインスイッチの問題を深めているのは、スイッチとラベルの位置が悪いせいだと思います。

まず、本体横にあるPower Modeスイッチの表示ラベルが本体底面にあるため、テーブルに置いてある状態ではスイッチをどちらに動かせばよいかわかりません。使い慣れている人でも、Ecoにするつもりが間違えてTurboにしてしまい、ものすごい爆音になってしまうリスクがあります。(その点、Oppo HA-2なんかはスイッチを切り替えると徐々に音量がフェードインする仕組みになっています)。

ゴム足を付けていないと、底面のスイッチが接触して動いてしまいます

また、iEMatchスイッチは本体底面にあり、付属のゴム足を装着していないと、このスイッチがテーブルに接触して擦れてしまうので、知らない間にスイッチが切り替わっていることがあります。(ゴム足を付けていても、その心配があります)。

私自身も、なんだかヘッドホンの音量が低いな、なんて悩んでいたところ、あとで本体裏面を見たらなぜかiEMatchスイッチが有効になっていた、というミスを何度か経験しました。

つまり、常に注意が必要なスイッチなのに、配置場所とラベル位置や挙動なんかがユーザーフレンドリーではないので困ります。

JVC SU-AX01はデザインがとても優秀です

この点においては、たとえば、私が最近買ったJVC SU-AX01とかは、一見micro iDSDと同じようなアナログボリュームノブに見えますが、実は内部では高級据え置きアンプと同じく、IC制御アナログ抵抗ボリュームを採用しており、低ボリュームでのギャングエラーを徹底的に排除しており、ゲインスイッチを不要にしています。

さらに、SU-AX01のスイッチ類は本体前面に集約されており、ラベル表示も手触りも良好ですし、偶発的なアクシデントを未然に防ぐために、しっかりと考えられており、さすが老舗オーディオメーカーとして、ユーザーへの配慮は素晴らしいです。

それと比べると、iFi Audioの場合は、ユーザーの自己責任に依存する、多少荒削りな部分がありますね。

USB入力

micro iDSDのユニークな点として、USBソケットが一般的なUSB BタイプやマイクロUSBではなく、オスAタイプです。つまりUSB A延長ケーブルを接続するための形状です。

青色のUSB 3.0タイプケーブルが付属しているのですが、本体側のソケットはUSB 2.0なので、USB 2.0ケーブルでも問題なく使えます。iFi Audioいわく、USB 3.0ケーブルの方がスペックや品質が高いという理由のみで同梱品に選んだそうです。

付属の青色USBケーブル

こういう金属むき出しの端子だと、ガタガタして心配です

アップルのUSB Cタイプアダプタも使えます

iFi AudioがわざわざUSB Aタイプを選んだ理由は、上の写真のように、アップルCCKやアンドロイドOTGケーブルなどをそのまま挿入できるようにする配慮です。コネクタが奥までちょうどピッタリ入るサイズなので、マイクロUSBみたいにぶつけて曲げたり壊したりする心配がありません。

USB Bタイプ用変換アダプタ

一般的なUSBケーブルを接続したい場合は、付属の黒いアダプタを介すのですが、これは付属ケーブルやCCK・OTGアダプタなどと違って端子部分が金属むき出しのため、そのままだとちょっとガタガタして心もとないです。とくに本体のUSBソケットは基板にハンダ付けしてあるだけなので、あまり動かすとそのうち故障しそうです。

Oリングを使ってガタ防止してみました

ホームセンターで売っているOリングを三つ使って、このアダプタの金属部分がガタガタしないよう改造してみました。これでちょっと心が休まります。

こんな部品を作ってみました

追記:Oリングではやっぱりガタガタしてしまうので、3Dプリンターでガタ防止パーツを作ってみました。

ちなみに上の写真で使っている銀色のUSBケーブルはiFi AudioのGeminiというやつです。長くて重いので、普段はmicro iDSDではなく、据置きタイプのmicro iDAC2で使っています。

このGeminiケーブルは、自重が重すぎて本体USBソケットに負担がかかってしまうため、写真で見えるようにゴム足を接着してちょうど本体と同じ高さで安定するように改造しました。とても良いケーブルなのですが、この部分だけはメーカー側でどうにか対策してほしいです。

PCM 768 kHzに対応しているので、Mac OSでもDoP 11.2 MHzが可能です

Audirvanaでもフル対応でオールグリーンなのが気持ち良いですね

Windowsでは公式サイトからドライバをダウンロードする必要があります。Macではドライバ不要で認識します。

ちなみに、私が購入したmicro iDSD BLはファームウェアバージョン5.0が搭載されていたのですが、コレを書いている時点での最新バージョンは5.2だったので、公式サイトからダウンロードしてアップデートしました。

Windowsでファームウェアをアップデートする方法

Windowsの場合、ファームウェアアップデートの方法はちゃんと手順書を読まないとわかりにくいです。USBドライバをインストールした際に作成されたフォルダ(通常だと/Program Files/iFi/USB_HD_Audio_Driver)の中にある「iFiHDUSBAudio_dfuapp.exe」というプログラムを実行することで、現在接続されているmicro iDSDのファームウェア情報と、ダウンロードしたファームウェアファイルを選択してアップデートすることが可能です。

ちなみに、公式ファームウェアは5.2と5.2Bという二種類が存在するので、アップデートする際にはどちらを選ぶか注意が必要です。「B」タイプはスマホ接続用に特化させた特別版で、スマホとmicro iDSDを接続したまま放置しておいても、スマホのバッテリーからmicro iDSDに給電しないよう配慮されたバージョンです。

もちろんBタイプファームウェアでなくてもスマホで問題なく使えますし、普段はパソコンで使っていて、たまに外出時に必要なときだけスマホと接続する、といったケースであれば、通常版のファームウェアをインストールするべきです。Bタイプは、常時スマホと接続していたい人のみ導入するべきでしょう。

スマホからPCM 352.8 kHz(DXD)もネイティブ再生できました

ソースが対応していれば、DSD256(11.2MHz)もネイティブ再生できます

アップルUSB Cアダプタ経由でAndroidスマホと接続してみました。Onkyo HF Playerを使ってみたところ、PCM 352.8 kHz (いわゆるDXD)もDSD256 (11.2 MHz)も問題なく快適に再生できました。

2014年に初代micro iDSDを購入した際には、まだ発売して間もない頃だったので、ファームウェアやドライバなども熟成していなかったせいか、高レートのハイレゾを再生した場合はプツプツと音飛びすることがあったのですが、今回のテストでは、micro iDSD、micro iDSD BLともに、音飛びなどの問題には遭遇しませんでした。

角型TOSLINK光アダプタと、USB Bタイプアダプタ

アナログRCA出力の隣にあるコネクタは、同軸S/PDIFデジタルですが、実は光デジタルも使えます。AK DAPなどと同じ3.5mm光デジタルプラグ、もしくは上の写真のように、付属の3.5mm→角型TOSLINK光デジタルアダプタを装着できます。

しかも、この端子は、同軸のみデジタル入力と出力の両方を兼ねています。どういう仕組みかというと、USB接続で音楽を再生している場合はS/PDIF出力になり、USBが使われていない場合はS/PDIF入力になるという、単純明快で合理的な方式です。

ちなみに「nano iDSD」や「micro iDAC2」の場合は、見た目は似ているものの「同軸S/PDIF出力」のみなので、入出力兼用(しかも光入力も対応)というのはmicro iDSDのみの特権です。

色々ためしてみました

今回、試聴や動作チェックを行う際に、上記写真のような接続も試してみました。

micro iDAC2には同軸デジタル出力がついているので、普段のリスニング環境(パソコン → micro iDAC2 → Violectric V281)とは別に、再生中の音楽を同軸デジタルでmicro iDSD BLに送る事ができるため、交互の比較試聴が容易です。(同軸ケーブルをChord MojoやJVC SU-AX01などに差し替えるのも手軽ですし)。

もちろんUSBとS/PDIFで音質が変わるかもしれませんが、気になるほどの違いは感じませんでした。

ちなみに、色々と動作テストをしている際に気がついた注意点が二つありました。

まず、私のmicro iDSDとJVC SU-AX01はどちらもXMOS社のUSBインターフェースチップを登載しており、双方のドライバをWindowsにインストールした状態だと、音楽再生が開始しないなどのトラブルが発生しました。お互いのドライバが干渉か上書きされてしまったんでしょうかね。一旦両方をアンインストールしてから、インストールの順番を変えたら上手くいったり、再起動したらダメになったり、結局両方のドライバを同時に入れておくのトラブルの元になるので諦めました。ほかにもXMOSチップを採用しているUSB DACは多いので、一つのパソコンにドライバを複数入れる際には注意が必要です。

その点ドライバ不要のMacは切り替えが容易で便利です。そろそろWindows 10もドライバ不要でUSB Audio Class 2対応になるという話も出てきているので、ようやくこの悩みから開放されそうです。

もう一つ注意点として、micro iDSDはS/PDIF入力でDSD(DoP)は再生できないようです。同軸でDoP出力ができるFiio X5-IIから試してみたら、無音でした。

さらに、面白半分でmicro iDAC2でDSDを再生中に同軸S/PDIFをmicro iDSDに接続してみたら、「ジャー!」というものすごい爆音ノイズが流れました。送り出しをASIOやKernel Streamingなど色々試してみましたが変化は無かったので、多分micro iDAC2がDSD再生時におかしなS/PDIFデータを送信しているのだと思います。かなり限定的な条件ですが、すごい爆音なので注意が必要です。

音質とか

試聴には、最近よく使っている密閉型ヘッドホンのベイヤーダイナミックDT1770 PROと、開放型ヘッドホンGrado PS500を使いました。

DT1770はインピーダンスが250Ωと高めなので、アンプの電圧もそこそこ要求されるのですが、micro iDSD BLで使ってみたところ、Power ModeスイッチはNormal設定で、ボリュームノブは50%くらいで適正音量が得られました。Grado PS500もNormalモードでちょうど良い感じでした。



モロッコ出身のジャズピアニストJean-Marie Machado のアルバム「Lua」を88.2kHzハイレゾPCMで聴いてみました。ヨーロッパを中心に80年代から活動しているベテランアーティストで、オーソドックスなジャズピアノトリオだけでなく、世界各地の音楽家とのコラボレーションなど多方面で活躍しています。

このアルバムでは全曲通してDidier Ithursarryというアコーディオン奏者とのデュオ演奏を披露しています。格子模様のように、双方がリードとハーモニーを交互に繰り広げる気合の入った熱演で、アコーディオンと言われて想像するようなベタなタンゴっぽい弾き方ではなく、むしろシンセパッドやオーケストラのような重厚なレイヤー音が空間を埋め尽くすような音色で、オーディオ的にも楽しめます。

作曲スタイルもミニマルなテーマを積み重ねていく近代ジャズ的アプローチなのですが、あえて意表をついたり手腕を見せびらかすような書き方ではなく、ちゃんと一曲ごとに構成がよく練られており、最初から最後まで流れるように展開していく映画音楽のような作品です。

今回の試聴では、Black Label以外にも、micro iDAC2+Violectric V281、JVC SU-AX01、Chord Mojo、通常版micro iDSDなど、色々と交互に入れ替えて比較してみました。どれも優秀なDACアンプでありながら、それぞれに明らかな個性が感じられて、とても有意義な体験でした。

まず、このmicro iDSD BLが、他のどれよりも特出して「空間の広さ」を感じられ、音楽まわりの空気の余裕がありました。左右や前後の奥行きなど、多方面に音が広がっていき、音響の壁を感じさせません。音像そのものの距離感も若干遠めです。

とくに通常版micro iDSDと比較すると、明らかな音質向上が感じられましたので、わざわざ買い換えた甲斐があったと一安心しました。よりサウンドが大人になったというか、音楽的に充実しており、確かな進化があります。

とくに、通常版で感じられた高音の硬さと熱気のようなものが幾分か緩和され、そのおかげで一音一音のアタックが確実になり、無駄にギラギラと響かなくなりました。さらに中域の存在感と解像感が増しているようで、音色の厚みと立体感の両方が、通常版よりも進歩しています。

全体的に見て、Black Labelになったことで「コントロールが増した」という表現が一番しっくりくる感じで、とくにアコーディオンのようなリード式楽器は、通常版ではビービーとうるさく不得意だったのですが、Black Labelでは奏者の体の動きによる出音の立体感や、リード孔の震えている感じが良く出ています。

よくプロの評論家だと音色をワイン産地とかに例えたりするものなのですが、私ではそこまで高度な語彙は使えないものの、ふとリスニング中に思い浮かんだのは、通常版micro iDSDが高純度のウォッカみたいな舌触りだとしたら、Black Labelは風味が奥深いウィスキーになったかような進化を感じました。

iFi Audio自身がイギリスのメーカーということもあり、よく音楽をウィスキーに例えてるのをブログなどで何度か目にしましたが、Black Labelを聴いていると、あながち見当違いでも無いな、なんて今になって思い返しています。

どちらも同じルーツから生まれて、高域のクリアさや切れ味などは双方引けを取らないものの、Black Labelでは、より熟成された中域の厚みがコクのある魅力を引き出しています。それでいて、響きの味付けが濃すぎないので、長時間楽しんでも飽きが来ません。

なんか変な喩えになってしまいましたが、ようするにギラギラした感じが薄れて、中高域が存分に堪能できる奥深さが付加されたことは確かだと思います。とくに空間広さやスケールの爽快感は向上しているので、コッテリと丸くなったわけではありません。

Black Labelは回路のパーツ類をいくつか変えただけでここまでサウンドが進化したわけですが、これは結局、こう狙ったサウンドになるよう入念にチューニングした結果なのか、それとも単純に高品位な部品に変えただけで必然的にこういった音色になったのか、その辺がちょっと気になります。とにかく、素晴らしいサウンドです。

据え置き型のMicro iDAC2+Violectric V281のコンビネーションは、私が普段自宅でレファレンス的に使っている装置というプライドがあるのですが、これと比較してもBlack Labelは互角に張り合えるほどの充実したサウンドを繰り広げてくれました。ただし表現の手法は大きく異なります。

たとえばこのアルバムのピアノ演奏の場合、Micro iDAC2の方は、ピアノそのものの楽器音よりも、むしろ音が出た後に空間に響き渡る倍音成分や、ホール音響の状況などが、とても豊かで正確に感じ取れます。全帯域が高密度で、音響全体を把握することに特化しているような感じで、録音に秘められた全部の音、とくにハーモニーや倍音の情報を余すこと無く引き出せています。

一方Black Labelの方は、ピアノそのもの、というか、もっと突き詰めると、鍵盤のハンマーで金属弦が叩かれたそのものの第一声が、正確に、ダイレクトに耳に届きます。そして、そのあとの音色は、空間の奥の方に遠ざかっていくような鳴り方をします。つまり、楽器だったら楽器自体の出音が強調され、その後のうねるようなトーンや響きはあまり前に出てこないため、クリアで開放的な雰囲気が得られるのだと思います。アコーディオンであれば、アーティストの指使いや、リードから音が鳴り出す瞬間までがしっかりと聴き取れるので、こういうのを「スピード感がある」というのでしょう。Black Labelになって、通常版micro iDSDのようなギラッとしたホットさが抑えられているからこそ、ここまで繊細な表現が可能なのかもしれません。

JVC SU-AX01は、また根本的に違う鳴り方で、とくに音色そのもののふくよかな魅力が際立っています。例えばピアノやアコーディオンだと、音が鳴り出すアタックの解像感や、空間の広さや響きとかは他にゆずるのですが、楽器の胴体から鳴り響く「トーン」の部分が豊かに充実しています。人間の声だったら、滑舌よりも歌声の魅力を引き出す、JVCらしい仕上げ方だと思います。スピード感も空間広さも解像感もあまり目立たないので、こういうのは比較評価の場に挙げられると不利なタイプの音作りだと思うのですが、むしろ好きな音楽を長時間聴き込むことで、その音色の美しさに納得するようなサウンドだと思います。



Aparteレーベルから、Beatrice Berrutが演奏するリストのピアノ楽曲集を96kHzハイレゾPCMで聴いてみました。

リスト中期の名作「巡礼の年」から数曲と、「バラード1・2番」「コンソレーション」など、選曲のセンスが素晴らしく、ただの若手新人の超絶技巧を披露するような、ありがちなアルバムではありません。

リストというと、奏者のアプローチには、隠居の賢者みたいな弾き方と、燃えさかる悪魔的な弾き方に分かれると思うのですが、このピアニストはどちらかと言うと後者でありながら、それほど臭いコブシ回しは感じられず、力強くもピュアなピアノの鳴らし方です。普段「リストはくどいから聴かない」という人ほど、ぜひ聴いてもらいたいアルバムです。

Chord Mojoと並べてみると、かなり巨大です

このピアノソロアルバムでは、とくにmicro iDSD Black LabelとChord Mojoの違いがとてもわかりやすく現れました。

どちらのアンプも必要十分な性能と駆動力を持っているため、ほとんどの音楽では僅差というか、実際そこまで違いを意識するほどでもないのですが、一度気になりだしてしまうと、はっきりと異なるサウンドのように思えてしまいます。

簡単に言うと、音色の美しさはChord Mojoの方が優れており、壮大なスケール感はmicro iDSD BLが圧倒的です。なんというか、Mojoがカレーの甘口で、micro iDSD BLが辛口、みたいな喩えが頭に浮かびました。

Mojoは中域が非常に聴きやすく艷やかで、刺々しい不快感が一切無い透明な音色にウットリしてしまいます。さすが人気が出るはずだな、とつくづく納得してしまいます。JVC SU-AX01も音色が綺麗なタイプですが、あちらは肉厚なステーキみたいな感じで、一方Mojoはキャンディとかマカロンみたいな口当たりの良さがあります。決して軽薄だとか悪い意味ではありません。

Mojoはなんというか音楽がコンパクトにまとまったオルゴールみたいなサウンドで、音場全体がリスナーの手中に収まるサイズ感でキラキラと音色が輝くので、よく「粒立ちが良い」とかいう表現が使われるタイプだと思います。さらに低音がmicro iDSD BLと比べると緩めで優しいため、音楽の流れを邪魔せず、音色のエッセンスを乱さない巧みな仕上がりです。

一方micro iDSD BLの方は、Mojoほど「綺麗な音色だ」と思えることは少なく、むしろ楽器の荒っぽい部分も見え隠れするのですが、ステレオ感や奥行き、そして上下にそびえ立つような錯覚で、リスナーの手に余るほどのスケールの大きい体験ができます。

たとえば、試聴に使ったリストのピアノ曲集では、Chord Mojoはピアノの音色そのものは圧倒的に美しいのですが、曲の展開は若干物足りなく、なんだかリストなのにショパンのような枠組みに落ち着いてしまう気配すらあります。

一方micro iDSD BLでは、ピアノの音色はMojoに一歩(二歩、三歩)譲るのですが、その代わりに、怒涛の迫力が体験できました。一曲の初めから終わりまでの起伏やストーリー、その瞬間に作曲が意図しているイメージを真正面から体験できました。

収録曲の中でも、特にバラード1・2番のように、冒頭はサロン風に流すエレガントさから、いきなり大爆発するような作品でも、Micro iDSD BLではサウンドの厚みに汗苦しさを感じさせず、雄大なアルプス山脈の滝のような等身大以上のスケールが体感できます。Aparteレーベルらしく音響が深く奥行きを持って録音されており、Micro iDSD BLでは客席にいるような距離感が感じられ、小ホールでのリサイタルの臨場感がよく出ています。

ついでに、通常版micro iDSDとBlack Labelを比べてみましたが、このコンサートホール的臨場感はBlack Labelでかなり進化しており、通常版ではちょっと乱雑に聴こえてしまいます。

不思議なのは、これまで問題ないと思っていた通常版micro iDSDのサウンドも、Black Labelと交互に比較すると、なんとなく「いびつ」に思えてしまい、特定の響きがいきなり耳元に飛び込んできたりするデコボコした不安定さに気がつきます。この差は、音色や周波数的な違いではなく、なんというかコンサートホールが改修工事を経て、音響の乱れが整えられたかのようなイメージです。



カナダのAnalektaレーベルから、Julie Boulianneが歌うヴィヴァルディとヘンデルのバロック・オペラアリア集を96kHzハイレゾPCMで聴いてみました。

このレーベルは古くからバロックやクロスオーバー系ジャンルで多くの佳作アルバムを出しているのですが、ジャケットも選曲も、とにかく活動が地味で、あまり注目を浴びることがありません。なんというか、図書館とか市民ホールの物販コーナーとかで見かけそうな体裁です。

バロックのアリア集(とくにヴィヴァルディとか)は、私自身は不勉強なので、どれも同じ曲のように聴こえてしまい、あまり積極的に買う機会は少ないのですが、このアルバムはそんな初心者でも前知識無しで存分に楽しめました。

バロックアルバムによくある学術論文みたいなガチガチの退屈な演奏ではなく、歌手とオケに活気があり、気さくに楽しく歌をエンジョイしている風景が想像できるかのような作品です。

教会の軽やかな音響を活かした録音も優秀で、空中に舞うような弦楽器の音色と安定した歌唱の下で、どっしりと構えた通音のチェンバロや低音楽器がリズミカルさを常に保っています。聴きながら、つい指揮者の真似事でもしたくなってしまうような、気持ちのよいアルバムです。

通常版micro iDSDの時点ですでに広々とした空気感が味わえたのですが、Black Labelになって、その傾向が進化したようで、高音の空気だけではなく、中域の周辺にも、余裕のある空間が生まれています。音色自体はメリハリが強く歯切れが良いのに、中域も低域も、より遠くまで音が伸びていく開放感が向上しており、「厚みがあるのに、スッキリしている」という矛盾するような不思議な特徴があります。

試聴にあえて開放型Grado PS500を選んだのは、このヘッドホン自体がドンシャリが強めなので、通常版micro iDSDでは高音がちょっとギラギラしすぎて相性が良くなかったからです。Black Labelではそんな懸念を見事に解消してくれました。通常版であれば声がオケに負けてしまっていたところでも、Black Labelではそれぞれがちゃんと引き立っています。依然チェンバロのジャランとした弦の響きは健在なのですが、歌手の声は肉付きが良くなって、音色の優しさが増しています。

フロントパネルのXBass+と3D+スイッチ

テストを兼ねて、Grado PS500でリスニング中に、3D+スイッチの効果を試してみました。

これはスピーカーリスニングのような自然な前方定位のクロスフィード効果が得られるというスイッチで、Black Labelではさらにチューニングを見直したということですが、実際に試してみると、確かに通常版よりも音像が前に出る感覚は優れているものの、やはり使い所を選ぶエフェクトだと思います。

アルバムによっては、この3Dスイッチは高音が前に出すぎて違和感がある事が多いです。60年代の録音とかであれば、ラジオと一緒で10kHz以上の高音はあまり入っていないものが多いのですが、最近のハイレゾリマスターなど高音が沢山入っている音楽で3D+スイッチをONにすると、目の前にシャカシャカした空気の壁みたいなものが生まれてしまいます。

たとえば、今回試聴に使ったのは教会で録音されたバロック音楽なのですが、3DスイッチをONにすると、歌手のまわりの残響音がまるでカラオケエコーかのごとく音像を取り巻くように響いてしまいました。

実際スピーカーで音楽を聴く場合、高域のツイーターというのは指向性が強いため、左右と上下の角度をピンポイントでリスナーの耳に向けていないかぎり、ここまで耳元へダイレクトに届きません。普段そんなふうに高音が減衰した環境で聴くことに慣れているので、この3Dクロスフィードみたいに高音がグッと強調されると、聴き慣れたスピーカーっぽく感じられなくなってしまいます。

クロスフィード効果の効き具合はかなり強めで、とくに60年代のステレオ録音など、左右両極端にベタッと張り付いているサウンドの場合は、本当に自分の前方にあるスピーカーから音が出ているかのような効果が得られれます。

高音の音量は大きくなるので、3D+スイッチをONにしたらボリュームを若干落とすくらいでちょうどよい感じでした。初期のステレオオペラアルバムや、ジャズだとブルーノートなどのステレオ録音は普段ヘッドホンでは聴きづらいので、そういった場合この3D+は非常に重宝します。慣れてくると、常時ONにしていても気にならなくなり、むしろOFFにすると、一気にリアルな臨場感が失われてしまい、「ただの録音」に戻ってしまうので、その効果のほどに改めて驚かされます。

ちなみに、近年のワンポイントマイク録音のような、ステレオ音場や位相管理が自然な録音の場合だと、3DスイッチをONにしてもあまり効果が感じられないので、実はこのスイッチは録音の良し悪しを評価するような使い方ができたりします。

次に、低音ブーストのXBass+スイッチを試してみました。通常版micro iDSDでは、このスイッチの効果があまり強くなく、実際効いているのかどうか心配になるくらいだったのですが、Black Labelではかなり明確に違いが出るようになりました。

このXBass+スイッチが優秀なのは、楽器そのものの音色は変わらず、低音の空気感だけを拡張するような効果が得られることです。つまり、歌手の喉が急に太くなったり、ギターがベースギターに変身するのではなく、演奏している空間の低音の響きが強くなる感じです。

低音要素が薄い録音ではあまり効果が感じられないので、バロックやピアノリサイタルくらいであれば、若干ホールの残響が豊かになる程度です。今回試聴に使ったアルバムはすでにホール残響が十分に入っているので、XBass+スイッチを入れると過剰に聴こえましたが、もっとドライな90年代のスタジオ録音とかだとちょうどよい効果が得られます。

また、このXBass+スイッチが一番効果的だと感じられたのは、サンプル系のドライなキックドラムが入っているアルバム、たとえばハウスとかヒップホップなどです。普段聴き慣れた「ズンズン、ドンドン」といった乾いたキックドラムが、あたかもイベントのPAから鳴っているかのような「ズシーン、ドーン」というふうに体の芯に響くので、けっこう盛り上がります。

響きが欠落しているドライなDTMやスタジオ録音であるほど、3D+とXBass+ともに強烈な効果が得られるので、両方のスイッチを同時にONにすると、なんだかAVアンプとかカーステレオとかに登載されている「Live」とか「Rock」なんて書いてあるDSPエフェクトっぽい楽しみ方も味わえます。

iFi Audioは英国のメーカーなので、英国が誇るビンテージなドラムンベースのアルバムなんかを紹介しようかと思いましたが、下品だと言われそうなので止めました。そういうのにはエフェクト全開にするとかなりテンションが上がります。普段聴いている音楽が全部優秀録音なわけではないので、こういったエフェクトスイッチも案外役に立つものです。

次に、デジタルフィルタスイッチも、「Standard、Minimum Phase、Bit Perfect」の三種類を色々と切り替えて試してみました。結論から言うと、あまり大きな違いが感じられず、どれが一番好みかというのもなかなか決められません。なんとなくStandardが一番地味で、Minimum Phaseはふわっと優しい感じで、Bit Perfectが一番アタック感が強いような気もしますが、そこまで大差はありません。Chord Mojoと比較試聴していた時は、Minimum Phaseが一番Mojoに近いかな、なんて思いました。

たまに気が向いた時にカチカチと切り替えてみて、一番良い感じになるようにしますが、また別のアルバムを聴くと、また違う設定が良かったり、まあ本来そういったものなのでしょう。基本的に普段はBit Perfectにしています。iFi Audioの推薦は、装置の測定時はStandardを使い、実際の音楽鑑賞時はBit Perfectが好ましいということです。

ところで、今回の試聴はハイレゾPCMだったのですが、DSDを再生している時には、このフィルタスイッチの役割が変わります。DSDには必要不可欠な、高域ノイズをカットするアナログフィルターの動作点を変更するスイッチになるそうです。よくSACDプレイヤーとかだとフィルターは30kHzくらいを狙っているのですが、その辺の塩梅はメーカーごとに違います。

パソコンソフトでDSDをPCM変換する場合も、たとえばJRiver Media Centreだと、オプション画面で24・30・50kHzの三種類を選べますので、それと似たような効果があるのでしょう。

DSDは原理的にフィルタが無いと膨大な高周波ノイズがヘッドホンを直撃するので、フィルタOFFにはできないようになっています。50kHzとかは可聴帯域外なので、人間の耳には聴こえませんが、フィルタ無しだと装置への負担は大きいです。DSD(SACD)というのは2000年頃から普及していますが、その頃から現在まで、世代ごとの録音機材によってアナログ→DSD変換時の高周波ノイズ特性(いわゆるノイズシェーピング)は大きく変わるので、どのフィルタ設定が正しいかという絶対的な正解はありません。

「Standard、Minimum Phase、Bit Perfect」のスイッチ位置が、それぞれDSD再生では「Standard、Extended、Extreme」フィルタになるそうです。具体的な定数とかはマニュアルに書かれていません。

DSD再生時は、このフィルタ設定次第でサウンドが大きく変わります。というか、明らかに音量すら変わってしまいます。フィルタの設計が不明なのでどういう理論かわかりませんが、なぜかExtreme(スイッチがBit Perfect位置)が一番地味でおとなしく、Standardにするとパシャパシャと中高域が目立ち、音量も大きくなります。これは個人的にExtremeが一番好みに感じられるので、なおさら普段からBit Perfect位置にスイッチを合わせています。

ついでに、Power Modeスイッチを色々と切り替えて、音質の違いを聴き比べてみました。

Turboモードにしてみると、ボリュームを下げても若干サウンドが荒っぽくギラッとする感じがして、空間も間近に迫り、息苦しくなる印象を受けました。たとえ同じ音量でも、Turboモードでボリュームノブを下げるよりも、Normalモードでボリュームノブを上げるほうが趣味に合うようです。

実は、Ecoモードでもボリュームノブ7割くらいでPS500が駆動できるくらいの音量は出せるのですが、これもまたサウンドの印象がガラッと変わります。センターの歌手や楽器などの線が細くなり、左右のステレオ感がサラウンドのように広がります。コンサート会場で、一歩下がった位置で聴いているような薄味の感覚で、NormalやTurboと比べて覇気のない「しぼんだ風船」みたいな感じがして、あまり好きではありませんでした。

どれが正解というよりも、ヘッドホンや楽曲ごとに好みのサウンドが選べると思えば良いだけなので、個人的にはPS500にはNormalモードが一番しっくりきました。

録音セッションの動画で

ところで、micro iDSDとは関係ない話ですが、私は音楽アルバムを買う時、よくYoutubeとかでレーベル公式のPV動画を見るのを楽しみにしています。とくにアーティストの素顔や録音セッションの背景とかが素のままで伺えるのが面白いです。

Gradoマニアの集会みたいです

今回試聴に使ったバロックアリアのアルバムも、YoutubeでPVを見たところ、アーティストと指揮者がセッション中にサウンドチェックを行っているシーンで、全員がGradoを使っていたので、いきなりの出来事におもわず笑ってしまいました。

唯一指揮者のみが20万円の最上位モデルPS1000で、他のみんなはPS500やSR325と、メタルボディで統一しています。たしかにGradoのメタルモデルはプロフェッショナルシリーズという位置付けなのですが、実際こういう録音現場で使っているのは初めて見ました。

実は今回Grado PS500を試聴に使ったのも、こんなくだらない理由が原因だったりします。

おわりに

純粋なオーディオ機器メーカーと、いわゆるガジェット系メーカーの違いは何なのか、と考えてみると、もちろん諸説あると思いますが、私が思うには、「音質向上を日々実践しているか」ということに尽きると思います。

オーディオなんだから音質を追求するのは当然じゃないか、というのも、もっともなのですが、私の考えはどういう意味かというと、ひとまず商品開発を終えて発売したら、その次はどうするのか、という事です。

ガジェット系メーカーの場合だと、たとえばDSDとかハイレゾ対応ステッカーとかバランス駆動とか、現時点で求められているトレンドを取り入れた新製品を発売したら、そこで一安心して、開発チームは今度は全然別のジャンルの製品開発に送り込まれ、また後継機が必要になるまでとりあえず解散になってしまいます。

一方、老舗オーディオメーカーを見ると、極端な例を挙げるとアキュフェーズとかオーディオリサーチとかみたいに、20年単位で代わり映えのしない筐体デザインを使い回しながら、数年ごとに、「今回はボリューム回路を改良しました」「差動増幅回路を変更しました」「電源を強化しました」といった感じで、着々と中身の音質改善を重ねていきます。

もちろんメーカーによっては、ただ電解コンデンサのメーカーを変えただけの簡単作業な「スペシャルアニバーサリーリミテッドプレミアムモデル」とかもあったりするのですが、ようするに、オーディオメーカーの熱意や探究心は、新商品を発売した時点で終了ではなく、そこで初めてユーザーフィードバックを得て、すぐに中身の改善に着手する開始地点だ、という考え方です。今回、micro iDSD Black Labelを手にしてみて、そんな向上心に好感を持てました。

通常モデルのmicro iDSDはとても気に入っているので、あまり悪く言うつもりはありませんが、サウンドの仕上げ方は解像感を全面的に出しており、音源によってはちょっと刺激が強すぎる傾向があったと思います。

さらに、一年後に同価格帯で登場したChord Mojoの追撃もあり、レビューなどで「スペックは凄いけど、音質は他社と比べると・・」といった評価をくだされる事が多かったように思います。完璧ではないものの、そういった音質面の弱点をBlack Labelで大幅に克服できたように思います。

イギリスのメーカーらしく、「我が道を行く」といった感じで、巨大なバッテリーと高電圧電源で、燃費の悪いD/Aとアンプ回路をガンガン駆動する、エレガントとは程遠い、でも本当に作りたいものを作った、というマニアックさが伝わってくるので、趣味のオーディオとして共感が持てます。

公式サイトのハッタリの効いた超理論にも、細かい部分でマジに突っ込むのもカッコ悪いですし、その熱意は疑いようが無いので、一緒に盛り上がった方が結果幸せになれるようなメーカーだと思います。

今回Black Labelを2017年の時点で再評価しても、相変わらず「性能・機能・音質」の全てにおいてトップクラスを誇るポータブルDACアンプだと思いました。

すでに2014年のmicro iDSDの時点で必要以上に多機能ですし、Black Labelになったことでサウンドの平均点もかなり上がったと思うので、筐体の大きささえ許容できれば、万人にオススメしたい優秀な商品です。ポータブルというよりは、バスパワーで手軽に楽しめるノートパソコン用DACといった使い道が一番似合っていると思います。

これ以上望むべきポイントは少ないのですが、個人的に不満点としてあげられるのは、やはりもうちょっとデザインや使用感のクオリティアップを目指してもらいたいです。

たとえば、ボリュームノブとゲイン調整スイッチの複雑さは、多くのユーザーに指摘されていますし、今後技術的にはもうちょっとエレガントに解決できるはずだと思います。

また、中身の基板はとても素晴らしいのに、アルミボディやスイッチなどの安っぽさや、両面テープで貼るゴム足、そして各モデルのデザインが似すぎて、わけがわからない商品展開など、まだ「通信販売の自作組み立てキット」ぽいチープさがあるので、今後デザイン面でのリニューアルで、もうちょっとユーザーに安心感を与えてくれる高級デザインを目指して欲しいです。

「写真よりも実物は安っぽい」というのは店頭での購入判断を鈍らせますし、このアルミボディはiFi Audioのほぼ全商品に共通しているデザインなので、それだけあと少し完成度を高めてくれれば、ラインナップ全体の魅力がかなり向上しそうな気がしてなりません。たとえば最近JVC SU-AX01を買って使い比べてみて、つくづくそう感じました。

真空管ラインバッファのiTube2

余談になりますが、真空管アンプにも熱心なiFi Audioなので、実は、今これを書いている最中にも、真空管バッファiTubeの後継機iTube 2が発表されました。しかし、RCAライン入出力のみで、残念ながらヘッドホン用にmicro iDSDと連携することを想定していないので、今後ポータブルでも真空管バッファが追加できるようなシステムを出してほしいです。

また、USBやS/PDIFのフィルター商品を色々出していますから、それらのテクノロジーをもっと積極的に導入してほしいです。今回もmicro iDSD BLにオプションでフィルターとかを色々追加するのも面白そうだと考えたのですが、あれもこれもゴテゴテとアタッチメントすると結構費用がかさみますし、結局ポータブルでは無くなってしまいます。

Pro iCAN

そういった様々な技術を惜しみなく投入したフラッグシップ機というと、2016年に登場した30万円の据え置き型ヘッドホンアンプ「Pro iCAN」があります。店頭試聴での印象は良かったですし、実物はクオリティの高い仕上がりだったので、とても興味があるのですが、据え置き型ヘッドホンアンプはそう安易に買い換えるようなものでもないので、いまのところ保留にしています。

このPro iCANと同じデスクトップサイズで、2017年中にはUSB DACを登載した「Pro iDSD」が発売される予定です。どちらも興味深い商品ですが、据え置き型は試聴も購入も敷居が高いので、今後このProシリーズが一段落ついたら、これらのデザインや音質をポータブルサイズに落とし込んだ次世代のmicro や nanoシリーズが登場してくれることを密かに願っています。